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求められる特殊性!「ライフサイエンス×IT」翻訳

実務翻訳では、ジャンルごとに専門知識の高い翻訳者が翻訳を担当し、質の高い成果物が生み出されるという図式が成り立っています。

翻訳の分野によって求められる専門知識はもちろん、求められる翻訳技量も異なります。

今回はその中でも「ライフサイエンス×IT」という二つの分野を掛け合わせたカテゴリについて、その特殊性を紐解きます。

目次[非表示]

  1. 1.別分野の知識が必要とされる翻訳
  2. 2.ライフサイエンスとIT
  3. 3.平易な単語ほど要注意
  4. 4.そのXは何なのか?
  5. 5.KIのサービス

別分野の知識が必要とされる翻訳

翻訳ジャンルは日本翻訳連盟が実施するほんやく検定のカテゴリーを例にとると、(1)政経・社会、(2)科学技術、(3)金融・証券 (4)医学・薬学、(5)情報処理の5分野に大きく分けられます。

分野ごとに異なる専門知識と翻訳技量が求められます。例えば、ある分野では、特定の訳し方が定石となっていたとしても、別の分野ではその訳し方が望まれない場合があります。また、ある業界では常識的な専門用語も、それ以外の業界では不自然にきこえる日本語もあります。ある分野の一流の翻訳者が別の分野での翻訳をうまくこなせるわけではありません。

そのため、特定の状況では、「専門知識の高い翻訳者が担当すれば、質の高い成果物が生み出される」という図式がうまく機能しないこともあります。

その特定の状況とは、翻訳対象の内容が複数の専門分野にわたっている場合です。つまり、対象の業界における専門用語や深い知識を必要とする一方、英語から日本語に翻訳するにあたっては別の分野の知識が必要とされる場合です。

そのなかでも、今回は、ライフサイエンス×ITという特定の分野の翻訳についてお話ししたいと思います。


ライフサイエンスとIT

皆さんが常日頃実感されているように、IT業界の発展とともに、あらゆる商品にITが可能にしたサービスや機能が付加され、消費者に提供されるようになりました。ライフサイエンス分野も例外ではありません。

ライフサイエンスとは、生物学を中心に、化学・物理学、工学、医学の内容を扱う分野であり、この分野の具体的な翻訳対象としてはライフサイエンスに特化した医療機器、分析機器、計測機器、試薬等に関する文書が挙げられます。一方、IT分野では、IoTやAIなどのテクノロジー、クラウドやモバイルによるサービスなど最先端の機能や情報に関するものが翻訳対象になります。

ライフサイエンス分野の翻訳では、医学、科学、物理に対する深い知識と適切な専門用語の使用が求められる一方、IT分野の翻訳では、時には世間一般ではまだ周知されていない最新技術についてよく理解し、平易な英語で表現された文章を正確に読み解く力が求められます。

平易な単語ほど要注意

Modifyは「修正」?
次の文のmodifyの意味をどう解釈しますか。

Modify the structure.

一般的には「構造を修正する」と訳出できますが、上記の文が分子構造について述べている場合、modifyは「改変」という意味に解釈できます。またタンパク質やDNAの修飾について述べている場合は「修飾」と訳出できます。

Productionは「生産」?
では、次のproductionはどうでしょうか。

Excess production occurs.

解釈はもちろん文脈によって全く変わりますが、ライフサイエンス分野で上記の文が登場した場合、productionは「産生」と解釈でき、この文章は「過剰産生が生じる」と解釈できる可能性が高いと考えられます。

では、次の例文はどうでしょうか。

An error occurred on the production.

システム開発の話をしている場合には、このproductionは「本番環境」という意味を持ち、この文章は「本番環境でエラーが生じた」となります。「本番環境」はon the live environmentともいいます。

「本番環境とは、システム開発に関する用語で、システムが製品として実際に稼動している環境のことである。単に「本番」と呼ばれることもある。」(出典:weblio辞書 )

ModifyやProductionのような平易な単語ほど多義性が強いため、単純に訳語変換できません。専門知識で縛られた思い込みを捨て、丁寧なリサーチを重ね、柔軟な姿勢で文脈を把握することが必要になります。

そのXは何なのか?

Prepareは「準備」?
次の例文はどうでしょうか。

Prepare X according to the instruction.

Xが製品名などの固有名詞だった場合、注意が必要です。この場合は、Xが何なのかによって、prepareの訳語が変わります。試薬だった場合、「調製」となります。単純に「準備」と置き換えないように、もしXがどんな製品かをよく確認した上で訳語決定する必要があります。

Mediumは「メディア」?
次の文のmediumの意味をどう解釈しますか。

X medium can be utilized.

Medium(複数形はmedia)という単語は、IT分野では「メディア」や「媒体」ととらえることができますが、ライフサイエンス分野では「培地」という意味も持ちます。このため、こちらも単純に単語を置き換えせず、Xの正体を見極めてから必ず判断しなければなりません。

以上のように、ある分野とある分野が混在した案件では、専門知識という固定観念のトラップに陥る可能性がありますので、客観的に文書を解釈する柔軟性が翻訳者に求められます。


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